釜石市の南の玄関口にあたる唐丹町の本郷地区にソメイヨシノを中心とした桜並木があります。毎年4月中旬になると国道45号線の桜峠北交差点から海辺に向かった谷あいがピンク色に染まります。
この桜並木は、昭和9年春、前年に発生した昭和三陸地震津波からの復興と皇太子(現天皇陛下)のご生誕の祝福を兼ね、当時の唐丹村長だった柴啄治が村民に呼びかけ、村民の協力により植樹が行われました。
前年の3月3日に発生した昭和三陸地震津波は、死者行方不明者数が3064人にのぼる大災害でした。中でも岩手県沿岸の被害が大きく、当時の唐丹村本郷では津波により102戸中101戸の家が流出して地区が全滅したほか、人口613人のうち死者行方不明者は328人と5割以上の住民を失いました。
この津波では、明治の大津波の教訓もあって被害が少なかった所もあったのですが、当地区には「冬の晴天には津波は来ない」との言い伝えがあり、また、発生が深夜だったことから眠りについた人が少なくなかったといわています。
多くの住民を失い打ちひしがれた状況の中で、復興を誓った地元の人々は、南は吉浜村(現大船渡市)境から北は旧釜石町境までの街道沿いに約2000本のソメイヨシノを植え、近くを流れる片岸川と熊野川沿いに植えた約800本と合わせ約2800本の桜を植樹しました。満開の桜並木からは、犠牲者への鎮魂と、村の未来を皇太子の未来と重ね合わせ夢を託した当時の村民の想いが伝わります。
今年4月29日、唐丹町の
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(岩手経済研究2018年4月号で紹介)